ソーシャルメディア上の故人のアカウント数は、生きている人の数を上回るようになる？

• ソーシャルメディアが成長するにつれ、亡くなったユーザーのアカウント数も増加し、「デジタル墓地」という概念が生まれた。
  
• 大手VPNサービスプロバイダであるExpressVPNが、各国の4つのソーシャルメディアプラットフォームにおけるこのようなアカウントの数を予測。
• 特にアメリカの数字が際立っており、2100年までに6億5,900万人の死亡アカウントが予想されている。
• 故人のアカウントを維持することに関しては、社会的な考え方と同様に、ソーシャルメディア企業のアプローチも進化していくだろう。
  

• この現象は、オンライン上の遺産を管理し、個人データを保護するために、死後に自分のアカウントに関する取り決めをしておくことの利点を強調している。

恐ろしいことに聞こえるかも知れませんが、デジタル時代の今、写真、メールアカウント、ソーシャルメディアへの投稿など、ほとんどの人はデータ遺産を残すことになります。 

オンラインで思い出を呼び起こすことができることは、愛する人にとって慰めになるかも知れません。しかし、世界中でおよそ50億人がソーシャルメディアを利用しており、プラットフォームが故人のアカウントで埋め尽くされる未来が、急速に現実のものとなりつつあります。 このことは、どの国でこうしたデジタル墓地が最も大きくなるのか、そしてソーシャルメディアプラットフォームはそれに対して何を計画しているのか、という広範な問題を提起しています。

ExpressVPNは、特定の国の4つの人気ソーシャルメディアプラットフォームにおけるデジタル遺産の未来に焦点を当て、この現象を調査しました。私たちのアプローチでは、2019年にオックスフォード大学が行った同様のテーマに関する研究の手法にヒントを得た予測を用いて、さまざまな地域における現在の利用者の活動量と死亡率を分析しました。

私たちのオンライン上の存在のその後を探るこの調査は、デジタル遺産を管理することの複雑さと倫理的配慮に光を当てるものです。

デジタル墓地はどこまで大きくなるのか？

はじめに、私たちが考えるべき亡くなったユーザーのアカウント数はどれくらいなのでしょうか？将来を見据えた予測を立ててみましょう。

私たちの分析チームは、Facebook、Instagram、X（旧ツイッター）、TikTokの4つの主要なソーシャルメディアプラットフォームを分析対象とし、故人のアカウントがどのように増加しているのかを詳細に調べました。

8ヶ国（米国、英国、フランス、ドイツ、スペイン、イタリア、オランダ、ポルトガル）に焦点を当て、ソーシャルメディアの利用状況を2024年、2050年、2100年の人口予測と比較しました。

亡くなったソーシャルメディア利用者が最も多いのは米国と予測

アメリカでは、亡くなったソーシャルメディアのユーザー数は、2100年までに6億5,900万人になり、予測人口3億6,600万人のほぼ2倍に上ると予想されています。この高い数字は、アメリカのソーシャルメディア普及率の高さと、継続的に増加しているユーザー数を反映しています。 

下の表は、その他の国々とその予測人口増加率、2050年と2100年の故人勘定予測です。

イギリスは他の国とは少し異なり、死亡したソーシャルメディアユーザーの数は、2100年までに存命中の人口と同じになると予測されており、その数字はどちらも7,000万人前後です。アメリカと比較して、増加率がこのように遅いのは、ソーシャルメディアの普及率が低いことが主な原因です。

ドイツとフランスも同様のパターンを示しており、2100年には死亡した利用者が生存している人口をそれぞれ3,100万人と3,800万人上回ると予測されています。両国ともソーシャルメディアの利用率は比較的高く、人口はほとんど変わらないと予測されています。 

イタリア、スペイン、オランダ、ポルトガルでは、故人のソーシャルメディアユーザー数は2100年までに生存者の数を大きく上回ると予測されています。この現象は特にスペインとイタリアで顕著で、死亡した利用者は生存している人口のほぼ2倍になります。これは、これらの国で予想される人口増加率の低さの結果によるものです。

どのプラットフォームが最も多くのデジタル遺産をホストするか

最大のソーシャルメディアユーザーを抱えるアメリカに焦点を当て、2050年、2075年、2100年までの4つの主要なソーシャルメディアプラットフォームにおける故人ユーザーの予測を分析しました。この分析から得ることができた、どのプラットフォームが最も多くのデジタル遺産を保有することになるのかについての洞察をご紹介します。

アメリカでは、2100年までにフェイスブックが最も多くの故人アカウントを持つようになると予測されており、その数は推定2億7,860万人に上ります。この数の多さは利用者の多さを反映しており、デジタルな思い出の主要な保管場所にもなっているためです。

ユーザー数が少ないインスタとTikTokは、2100年までにそれぞれ1億5,870万人、1億2,650万人と予測され、依然として多数の故人ユーザーを抱えることになりそうです。 

最後に、Xは2100年までに9,490万人の故人ユーザーを抱えるという比較的低い予測を立てていますが、これはユーザー数が少ないことと、2022年にオーナーシップを変更して以来成長が鈍化しているためです。 

これらの予測は、特にソーシャルメディア大手がこれらのプラットフォームをアクティブに保つためにかけるコストを考えればなおさら、故人のアカウントの管理と倫理的配慮についての疑問を投げかけるものでしょう。 

デジタル遺産の維持費用  

ソーシャルメディアプラットフォームがデジタル墓地に進化するという見通しは、感情的・倫理的な考察だけでなく、金銭的な意味合いも含みます。

平均的なソーシャルメディアのプロフィールは1GBのストレージを必要とし、ストレージのコストは1GBあたり月額0.02米ドルと推定されるという仮定に基づけば、死亡した個人のアカウントを維持することは、ソーシャルメディア企業にとってすでにかなりの出費となっているものと考えられます。 

2100年までにアメリカで死亡したフェイスブックユーザーが2億7,860万人になると推定されるため、これらのプロフィールを保存するための年間コストは約557万ドルに達する計算です。この計算は、保管コストが一定であると仮定したもので、あり得ないことですが、将来ソーシャルメディアプラットフォームに財政的負担がかかる可能性もあることを浮き彫りにしています。

現実的には、フェイスブックやどのソーシャルメディア企業も、非活動アカウントをいつまでも維持しようとするとは考えにくいです。そして、故人のアカウントを削除することの必要性は、いくつかの現象につながる可能性があります。

プラットフォームが設定する新たな制限

ソーシャルメディアプラットフォームはポリシーの見直しを迫られるかも知れません。死亡したユーザーのプロフィールを維持するための料金の導入や、保存されるデータの制限、あるいは一定期間利用されないとプロフィールが削除される可能性さえあります。

追悼のための代替プラットフォーム

故人を偲ぶ方法が他にも出て来るかも知れません。これには、分散型デジタルメモリアル、ブロックチェーンを利用した永代保存ソリューション、あるいは、大規模なデータ保存を必要とせずにインタラクティブなメモリアルを生成できるAI主導のプラットフォームなどが考えられますswmvxud5upiw。

プライバシーとデータ保護

個人情報は、たとえ故人のものであっても、詐欺師にとっては貴重な情報となり得ます。故人のデジタルの足跡を、不正アクセスや情報の悪用から守る必要性は、世界的に認識されつつあります。アメリカではRUFADAA法が施行され、個人がデジタル資産の受託者や執行者を指定できるようになりました。

デジタル遺産を事前に準備する

しかし、ソーシャルメディア企業や規制の枠組みが、デジタル遺産に関する明確で持続可能な解決策を提示するまでは、私たち一人ひとりが、自分の死後、オンライン上の自分の存在を自分の意思に従って確実に管理する責任があります。

ソーシャルメディアプラットフォームには、あなたが死亡した場合にあなたのアカウントがどうなるかを指定するための設定や方法がいくつか用意されています。

Facebook

フェイスブックは、死後のアカウントについて、追悼と削除という2つの主な選択肢をユーザーに提供しています

追悼アカウント

• どんな機能か：追悼アカウントは、友人や家族が集まり、思い出を共有するスペースです。アカウントは名前の横に「追悼」と表示され、「知り合いかも」のような公開スペースには表示されなくなります
• 追悼アカウント管理人：信頼する人物を、追悼アカウント管理人を任命することができます。この人物は、投稿をピン留めしたり、新しい友達リクエストに応じたり、プロフィールやカバー写真を更新したりできますが、あなたのメッセージにアクセスしたり、友達を削除したりすることはできません
• 設定方法：ヘルプとサポート > ヘルプセンター > アカウント設定 > 追悼アカウント管理人 から管理人を選択します。レガシーコンタクト追悼アカウント管理人に指定できるのは、18歳以上のユーザーだけであることにご注意ください

削除

アカウントを記念に残したくない場合は、死去と同時にアカウントを完全に削除することもできます。これにより、Facebookがあなたの死亡を知った時点で、投稿や写真を含むすべてのデータが永久に消去されます。

Instagram

Facebookに続き、Meta傘下のもうひとつのプラットフォームであるInstagramも、ユーザーのアカウントに同様のオプションを提供しています。

追悼アカウント

• どんな機能か：インスタグラムの追悼アカウントは、ユーザーの名前の横に「追悼」と表示され、友人や家族のためにそのデジタルな存在が保存されます。これらのアカウントは可視性を維持し、つながりのある個人には過去の投稿が表示されますが、タブや友達候補のような公開スペースからは削除されます
• 仕組み：フェイスブックとは異なり、インスタグラムは現在、追悼アカウント管理人の事前選択オプションは提供していません。追悼の手続きは死後に行われるため、友人や家族が死亡記事や死亡診断書などの必要書類を用意してインスタグラムに直接連絡し、手続きを開始する必要があります

削除

アカウントを削除するために、インスタグラムは近親者からの確認を求めます。このプロセスには、その権利を証明する書類（出生証明書、委任状など）や、ユーザーが亡くなったことを証明する書類の提出が含まれます。これにより、リクエストは慎重に法的基準に従って処理され、ユーザーのデジタルフットプリントがプラットフォームから永久に削除されます。

X

長年にわたり、Xは追悼アカウントを導入するかどうかで揺れ動いてきました。何年もの間、故人を含む非アクティブアカウントは休眠状態に置かれていました。しかし2023年、Xは活動のないアカウントの削除を開始しました。亡くなった友人や家族のアカウントを見続けたいという人もいたため、これはイーロン・マスク体制における新しい物議を醸す動きとなりました。

死後もXアカウントを有効にしておくには

Xには追悼アカウントシステムがないため、自分の死後もXアカウントをデジタル世界の一部として残しておきたい場合は、ログイン情報を誰かに教えるという積極的な方法を取る必要があります。

• アカウントへのアクセス：家族または信頼できる人が、確実にあなたのアカウントのログイン情報を知っていることを確認しておくことが重要です。この詳細は、遺言書に記載するか、機密情報を共有するその他の安全な方法に含めることができます。アカウントをアクティブに保つためには、誰かが定期的にXを利用する必要があります
• フルアクセスへの配慮：誰かがあなたのアカウントにアクセスできるようにするということは、メッセージや「いいね！」を押した投稿など、あなたのアカウントのあらゆる面を見られるということです。このレベルのアクセスは、あなたの個人的な交流や嗜好を暴露するため、かなりの信頼を必要とします

Xの活動休止ポリシー

記事公開日時点では、Xは過去30日間使用されていないアカウントを非アクティブと分類しており、以前の6ヶ月間という基準から大幅に厳しくなっています。このポリシーは、アカウントがアクティブであるとみなされ続けるために定期的なログインを必要とし、プラットフォーム上で記録を維持するための課題を提起しています。

TikTok

TikTokの場合、家族または法定代理人が死亡証明書を用意してTikTokのサポートに連絡することで、プラットフォームからアカウントを削除することが可能です。今のところTikTokは非活動アカウントを削除するかどうか明らかにしていません。 

事前にできること

ツイッターXのようにアカウントを削除されたくないなら、信頼できる人とアカウント情報を共有する必要があります。しかし、この選択にはプライバシーへの影響があることを忘れないでください。

GoogleとYouTube

Googleは、一定期間使用されなかったアカウント（YouTubeを含む）の扱い方をユーザーが決定するための積極的なツールとして、非アクティブアカウントマネージャーを提供しています。信頼できる連絡先に通知したり、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月の無活動後にアカウントを削除するように設定することができます。本人が何も設定していない場合は、遺族や法定代理人が必要書類を用意して死後にアカウントの閉鎖を申請することが可能です。

デジタル資産とサブスクリプションサービス

オンラインショッピングのアカウントやサブスクリプションサービスなど、特定のプラットフォームポリシーでカバーされていないデジタル資産については、死後の管理方法はさまざまです。事前準備のために次を行いましょう。

• リストを作成する：ソーシャルメディアだけでなく、すべてのデジタルアカウントを記録しましょう。オンラインショッピングのアカウント、定期購読サービス、デジタルライブラリなどを、ログイン情報と、死亡後の取り扱いに関する指示とともに含めるようにしましょう
• デジタル遺言に含めることを検討する：このリストをデジタル遺言に組み込むか、信頼できる個人がアクセスできるようにしましょう
• 閉鎖または移動のための直接の連絡先を作成する：これにより、遺言執行者または指定された人物は、死亡証明書などの必要書類を持って各サービスに連絡し、必要に応じてアカウントを閉鎖したり、所有権を移転したりすることができます
• サブスクリプションをキャンセルする：身辺整理をするのであれば、生きているうちにいくつかの定期購読を解約しておいた方が、遺言執行者にとって楽であることは間違ありません

調査方法

この調査は、現在のプラットフォーム利用者の指標と国の死亡率を統合し、研究オックスフォード・インターネット研究所（OII）による「Are the dead taking over Facebook? A Big Data approach to the future of death online」に着想を得た予測モデルを適用したものです。

• データ収集：各ソーシャルメディアプラットフォームの月間アクティブユーザー数の入手可能なデータを使用。死亡率は国の統計データベースから入手
• 予測モデルの適用：OIIの研究に類似した予測モデルを作成し、現在のユーザー活動と死亡率に基づいて死亡アカウント数を推定
• 前提：各ソーシャルメディアプラットフォームのユーザーベースと各国の死亡率は、2024年からの予測期間中、一定であると仮定。Xのプロフィール削除など、非活動アカウントに関する方針は確認されているものであり、変更や調整は行っていない
• 限界：長期的なソーシャルメディア動向の予測には、プラットフォームの人気、ユーザー行動、人口寿命の変化など、固有の不確実性があることを認める